ライタープロフィール

ミネナユカ

峰なゆか

1984年うまれ。
元AV女優ライター。
恋のから○ぎ11期生としてAVデビュー。
引退後、エロ、サブカル、文学についていろいろ書いてます。
ツイッターは@minenayukaでやってます。

公式ブログ
[峰なゆかのひみつの赤ちゃんルーム]

http://d.hatena.ne.jp/minenayuka/

はだかのりれきしょ
前編 〜鈴木杏里〜

 少し前にこんなような記事がヤフーニュースにとりあげられたのをご存知だろうか。

AV女優の鈴木杏里、日本の中国侵略に「いつも体で謝罪してる」 6月5日15時56分配信 サーチナ  台湾メディア「NOWnews」によると、日本のAV女優である鈴木杏里さんはこのほど、日中の歴史問題について言及し、「歴史は塗り替えることができないもので、尊重されるべきものだ」と語り、機会があれば、「中国人に自らの体をささげること」で日本の中国侵略への謝罪を示したいと語った。香港・文匯報が伝えた。(後略)

 どこをどうしてこんな話になったのか知らないけれど、ちょっとびっくりしてしまう記事である。もちろん完全な捏造記事だ。ともあれその記事の存在を知った鈴木杏里本人がまったく身に覚えがない旨ブログで発表するまでのしばしの間、このニュースと彼女の名前がネット上で賑わう。
 これをきっかけにして鈴木杏里の名前を知って、はじめて彼女のブログを読んだという人がけっこうな数でいたことだろうと思う。そしてその内容に驚いた人も多いと思う。例えば、捏造記事に対して書かれた彼女のブログから引用しよう。

『たまたまなのだろうが、ほとんど無作為のようなものなのだろうが、なんで自分なのだ?と心底不思議に思う。日本のAV女優なら誰でもよかったのだと思う。私は長いことこの業界にいるので、中国や台湾でも出演作が出回っているのかもしれない。有名すぎても信憑性がないので、私くらいマイナーな人間がよかったのだろう。若々しい顔立ちではないし、実際に若くはないし、教師の役をやることが圧倒的に多いから、大学を卒業していそうに思えたのだろう。そのようにいろいろなことが重なって私の名前が使われたのだと思う。 すでにそうやって報道されてしまったことなのだし、もう今更どうしようもないのだけれど、「愉快ではない」とだけ言っておきたい。』

 ちょっとおかしくないですか。だってこれ、AV女優のブログですよ。AV女優のブログっつったら普通、ペットの犬やら出先の食事やらのお粗末な写メとともに「オフだからゎんことまったりぉ散歩でぇと♪」とか「きょうわグラビアの撮影でっすo(^∇^o)(o^∇^)o↑↑↑ ぉ昼休憩ちぅ (*^_^*)」とか、あったま弱そうなこと書くもんじゃないですか。
 本人は「若くない」とか言ってるけど、まだ24歳。24の女性がブログに書く文章として、『「愉快ではない」とだけ言っておきたい。』って、ちょっと。ちょっと相場を突抜けすぎてやいませんか。
 はじめて彼女のブログを読んで驚いた人は、もちろん過去記事を辿ることでしょう。そして、これまた若い女性のブログでは普通見ない題材が頻出することに驚くのだろう。
 クリスト&ジャンヌ・クロード展に行ったかと思えば、ホリエモンのトークライブを観覧。古本屋さんで買った『お年寄り作文集』なる高齢同人誌みたいなものを興味深げに紹介し、フィギュアスケートを見てはキム・ヨナを『ガラスの仮面』の姫川亜弓、浅田真央を北島マヤに例える。
 誰も気にならないようなところに目をつけては、突飛な発想でもって解釈して、さらに飛躍した妄想に渡り、文学から漫画からとんでもない例を挙げて、それを巧みにまとめている。なにこの人。なにこの文章力、読書量、着眼点。中国がどうたらとかいうニュースなんて忘れて読みふけってしまうほど、おもしろい文章を書く人なのだ。

 さて、対談の第一回目はそんな鈴木杏里さんに話を伺った。

杏里 ひさしぶりー!!

―ひさしぶりだねえ。1年ぶりくらい?

杏里 あれっ、痩せた?

―前に会ったときよりかは痩せたかもー。

杏里 あれっ、背のびた?

――ううん! 背はのびないよね普通ね、成人してるからね! 杏里ちゃんは…変わらないねぇー。

杏里 うん、私変わらないって言われる。

——はじめて会ったのって、『エロスの地獄』(集団痴女もののAV)の共演のときだよね。

杏里 4年前? かな? デビューして1年目くらいのときで。あの撮影はすごいハードだったけどおもしろかった。自分の出演作ってあんまり見ないんだけど、あれだけは観た。

——4泊とかの泊まり込みで、睡眠時間もほとんどなかったんだよね。あのとき杏里ちゃん、痴女もの初めてって聞いてたんだけどすっごいイキイキしてたよね!

杏里 うん、あれで私は痴女ものの方がやりやすいってことに気付いた。今出演してるのもほぼ痴女もの。

——あのときはまさか杏里ちゃんがAVをこんなに長く続けるとは思わなかったよー。

杏里 なんで?

——んー、別にお金にもセックスにもそんな執着なさそうだから、すぐ飽きたって言ってやめそうなイメージがあって。

杏里 3DのAVを撮るまではやめられない!!

——あれ潮吹きとかすごい迫力ありそうだよね。画面から飛び出す潮!

杏里 私は絶対3Dで見たくないAVに出たいなー。

——どんなの?

杏里 ぶっかけとか。

——それ恐い! 画面から飛び出す精子!!

杏里 それ撮ったら引退してもいいや。

——引退したらどうするの?

杏里 執筆はやりたい。でもそれだけじゃ生活できないだろうから、@バージン(AV女優キャバクラ)も続けつつ。

——えええ、文筆業だけでもイケるんじゃないかなあ。もう携帯小説三作も書いてるんだよね。どういう内容なの?

杏里 いっこが中学生の子供向けのSF。

——一作目の『目覚めたら非合理美人』だよね。あれって中学生向けだったんだ!

杏里 ほら、携帯小説って小中学生の女の子が読むって聞いてたから。

——それがはじめて書いた小説だったの?

杏里 はじめて。まったく初めてで、書こうと思ったこともなくて、「書いてみますか?」って言われて書いた。

——文章を書き始めたのっていつ頃から?

杏里 勝手に映画の感想とかを書いたりするのは小学生くらいの頃からしてたような。

——えっ、それって書いてどうするの?

杏里 どうもしなくて、ただノートに溜めてた。

——読む方も昔から?

杏里 うん、親が海外小説が好きだったから。家にあったのはアガサ・クリスティとかエドガー・アランポーとか。あ、でも海外文学全集とかもあったから、いわゆる名作っていわれる、どこにでもあるような小説は一通り読んでたかな。

——私、いわゆる名作っていうのをちゃんと読んでなかったりするから、最近になって「はっ、そういえば私まだ『赤毛のアン』を読んだことがない!!」とか思って慌てて読んだりしてる。

杏里 『赤毛のアン』はお母さんがすごい好きで、シリーズを読まされた覚えがある。北海道にある「アンのふるさと」っていうところに連れていかれて、アンっぽい格好のコスプレさせられたりとか。

——私、『赤毛のアン』は読んだことないけど、アンが北海道出身じゃないことだけは知っているつもりだよ…。

杏里 あとはお兄ちゃんの本棚の、ヘミングウェイとかダニエル・キイスとか安倍公房全集とか。

——杏里兄の本棚、カミュとかヘッセとかありそう。

杏里 ふふ、あった気がする。お兄ちゃんの本棚に入ってたらへんのものはどれ読んでもけっこう性に合ってて、そこからかな。こういう、ちょっとよく分かんない話が好きになったの。よく分かんないっていうか、何も起こらないような。

——うん、私もできるだけ何も起こらないまま話が終わる小説が好き。少女漫画が好きなのもそうなんだけど。

杏里 私、フィッツジェラルドは少女漫画だと思って読んでるし。

——出た、独特の解釈!

杏里 あと、ヘミングウェイは梶原一騎だと思って読んでる。本人もマッチョだけど、登場人物が似てるというか、男の美学を追求しすぎてて女々しい感じ。

——あはははひどい!! でもちょっと分かる!

杏里 小学生のときに自己啓発の本にハマってた時期もあって。PHP文庫とか買って読んでた。

——それって活字中毒気味なとこあったの?

杏里 んー、に、近いのかな。食べるときとか、トイレに行くときとか、なんか読むものがないと用を足せないとか。

——読むものはなんでもいいんだよね。広告とか、原材料の表示とか。

杏里 「トイレそのあとに」の裏とか。

——…そこまでは読まない。でも読むのと書くのって違うじゃん。私、エッセイとかコラムとかは普通に書けるんだけど、創作したことないから小説書けなくて困ってるの。

杏里 私は逆にコラムとかをもっと書きたい。あと官能小説もまた書きたい。

——杏里ちゃんも官能小説書いたことあるんだ。

杏里 普通の小説より官能小説の方が難しかった。

——私、どうしても趣味に走っちゃってねー。最終的にいつも辿り着くのがアナル拡張だったりマイナーな方にいっちゃってね、だめなの。だめなんです。

杏里 私はどうしても男の一人称になっちゃって、なんか女を主人公にできないんだよね。

——AV女優が書く官能小説っていうと、どうしても実体験を彷彿とさせる的なさ、女の一人称を求められることが多いじゃん。でもそれって難しくない?

杏里 難しい。乳房がどうとか、臀部がどうとか説明しづらいよね。女の主人公が「私の桃のような尻が…」とか言ってても変だし。

——変だよね変だよね! だからって女性から見たちんこの克明な描写をしてもねえ。

杏里 それも変だよね…。あ、官能小説でおもしろいのってある?

——うーん、私もそこまで読んだことないんだよね。いわゆる官能小説って、普通に読む分には物足りないし、かといってオカズにもしにくいし…。

杏里 ふーん、そうなんだ。

——あれ? 杏里ちゃんってオナニーしないんだっけ。

杏里 しない。AVの撮影前になったら点検で広げたりとかはするけど。

——どういうことですかそれ。

杏里 私ちょっと閉じやすくて、間があくと痛くなっちゃうから。(両手で膣内をかきわけるようなジェスチャーをしながら)

——えっ、なにその動き! それって両手首を挿入してないとできない動きじゃん!! ちょっと待って、それ写真撮るわ。まんこを広げる杏里ちゃんの図。

杏里 あはは、実際は片手でやるけど。(一般的な手マンのジェスチャーをしながら) 撮影の前日と、あとは当日に現場入ってからセペ(膣内洗浄器)使うときのついでに。

——久しぶりの挿入だと痛くなりやすいもんね。プライベートでセックスしないんだったっけ。

杏里 うん、デビューしてから仕事でしかしたことない。

——それすごいね。だってもう5年やってるんでしょ。デビューするまでの経験人数も確か少ないよね。

杏里 二回しかない。

——二人じゃなくて?

杏里 二回。経験人数は二人で、ひとり一回しかしてない。

——えっ。

杏里 処女のときに相手も童貞だったのが一回で、それが全然気持ち良くなかったからもう一回試してみようと思って。それで友達に「童貞捨てたい子いない?」って聞いて紹介してもらって、もう一回童貞としてみて、でもそれも全然気持ち良くなくて。

——なんで二回目もわざわざ童貞にしたの!?

杏里 あはは、そうじゃないと口実がないかなって思って。私もとりあえずもう一回試してみたい、っていうだけだったから、相手もやりたいっていうよりはか、やってみたい子が良かった。でもやっぱぜんぜん気持ちよくないし。

——まあ相手はどのみち童貞だしね。

杏里 しかも、一回目の人は最後までいかなくて、途中で萎えちゃってね。それで二回目の人は精子見られるのが恥ずかしかったみたいで、イク前に途中で抜いてティッシュに出しちゃってね。

——かわいい! 童貞ってそういうとこ妙に恥ずかしがるよね。ゴムつけてる姿とか。

杏里 だからデビューするまで精子も見たことなかった。

——はじめてフェラチオしたのもデビュー作でだったんだよね。

杏里 うん、フェラチオもしたことなかったし、騎乗位もしたことなかった。

——最初はそういうの聞いて半信半疑だったんだけど、デビュー作の杏里ちゃんの騎乗位がさ、普通は挿れてから上下とか前後に腰を動かすでしょ。杏里ちゃんの騎乗位は腰は固定したまま上半身だけ前後にぎっこんばったんやるんだよね。何か、新しい運動みたいな。それで「ああ、この子は本当に騎乗位をしたことがないんだ」って納得したよ。

杏里 へー、ぜんぜん覚えてない。

——じゃあ、デビューしてから付き合った人とかもいないの?

杏里 そもそも付き合ったことない。

——あっ、初めての相手の童貞も付き合ってはなかったんだ。

杏里 うん、その人も友達に紹介してもらって。

——ああー、じゃあ本当にセックスしてみるためだけに出会った人だったんだね。初体験はなんでしてみようと思ったの?

杏里 16歳くらいかな。まわりがしてるから私もしとこうかな、っていうよくある動機で。

——AVもちょっと出てみようかな、って感じ?

杏里 もともとは私、着エロでデビューしてて。ヌード写真とかロマンポルノを見るのが好きだったから。

——ディータ・ヴォン・ティースとかだよね。

杏里 うん、ヌードがとにかく好きで。子供の頃からお父さんの週間宝石とか見てたし、あとヌード写真集を買って隠してたこともある。だから自分もヌードになることはそんな抵抗がないっていうか。

——じゃあAVでセックスしたときは?

杏里 痛かった。とにかく痛かった。

——なんでまた?

杏里 でかいから。最初っからでかめの男優さんだった。

——私もデビュー作の相手、戸川さん(ちんこでかい)だったから、しばらくNG男優にしちゃった…。

杏里 私、黒田さん(超ちんこでかい)だった…。

——事前に広げておくっていうのもそうだけどさ、挿れられてる最中に意識的にまんこ緩めるとかそういう技を会得してくよね。

杏里 「シーッ」って息吐いたりするとね。それでも痛いけど。

——締めるよりも緩める方が難しいよね。すごい精神統一が必要になってくる。

杏里 難しい難しい。

——でもさ、なんでAVデビューしてから彼氏作らなかったの?

杏里 欲しいと思ったことない。

——えっ。撮影以外でセックスしたいときとかは?

杏里 性欲ない。

——えっ。好きな人ができても付き合いたいとか、セックスしたいとか思わないの?

杏里 好きな人できたことない。

——ええっ、漫画のキャラとかにときめいたりしたことも?

杏里 ないんだよねー…。うーん。私ね、Aセクシャルっていうのなの。

——えーせく…?

杏里 恋愛感情とか、性欲とかないの。

Aセクシャル【asexual】
男性および女性のどちらをも性愛の対象としない人、もしくは性欲そのものがない人、およびその性的指向。

——そ、そうなんだ。へええ、そっか…。(動揺)

▶ 後編へ続く